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美しい日本の手仕事「こぎん刺し」をもっと身近に―SMILAUGH

2009年12月03日18時01分
青森に伝わる民芸「こぎん刺し」を独学で学び、創作こぎん作家として活動するSMILAUGHのまろさん。ヘアゴムやバッグなど、こぎん刺しをアレンジした普段使いの雑貨は、リーズナブルで使いやすく、こぎん刺しという伝統工芸をぐっと身近なものにしてくれます。毎月、さまざまな手作り市に精力的に出店しているまろさんに、こぎん刺しとの出合いや魅力について、たっぷり伺いました。

SMILAUGH/スマイラフ まろさん

創作こぎん作家。布小物の制作を経て、2008年よりこぎん刺しの作家として活動。品川てづくり市、手創り市(鬼子母神)、青空個展(代々木八幡)などの手作り市に、毎月出店している。「アトリエ もみの木」(新宿)にて商品の取り扱いあり。6月には鎌倉のレンタルルームミッキーにて初個展を開催予定。
ブログ:http://maro.blog9.fc2.com/

古典的な柄の一つ一つを覚えると楽しくなってきます


人気のくるみボタンのヘアゴムとストラップ。
―こぎん刺しの雑貨を作り始めたきっかけは?

もともとポーチやバッグなどの布雑貨を作って、手作り市に出したりしていたのですが、2年ほど経った頃に偶然、本屋でこぎん刺しが載っている雑誌を見たんです。気になって家に帰ってすぐに調べて、あっという間にはまってしまいました。それからはずっとこぎん刺し一本ですね。やればやるほどもっと作りたいという気持ちが強くなっていきました。こぎんの作品は去年の3月の手創り市に並べたのが最初なので、まだ1年くらいなんです。

―そもそも、こぎん刺しはどういうものなんですか?

諸説あるらしいのですが、江戸時代に津軽で倹約令があって、麻の衣服しか着ることができなかったんです。それで大切な着物を長く着られるよう、保温性を持たせ、丈夫にするために刺したのが始まり。それに装飾性が加わって、模様の美しさを競うようになったようです。身近に持つものも出てきたのは、最近だと思いますね。基本は20くらいの図案があってそれにラインなどを組み合わせるのですが、私が刺している「津軽こぎん」は目を奇数カウントで刺していくんです。平織りの生地やクロスステッチ用の布を使えば、目をカウントできるので、少し楽にできますね。目の詰まった生地には、抜きキャンバスを張ってから刺しています。

―とても規則的なんですね。アイテムはどんなものがありますか?

単純だから、すごく没頭してしまうんです。加工はすべて自分でやっています。ヘアゴムやストラップ、ポーチ、ティッシュケース、バッグなど全部で20から30くらいあります。ストラップは男性にも人気で、「お父さんに買っていこう」という方もいらっしゃいますね。


(左)愛用する裁縫セット。ピンクッションは手作り。 (右)手作り市での出展風景。

―こぎん刺しの魅力って何だと思いますか?

無我夢中で、時間を忘れるくらいどんどん刺していけるところですね。図ができあがっていくのが楽しいんです。それからやっぱり、日本に伝わる手仕事だということ。古典的な柄には一つ一つに名前と意味があって、ほとんどが縁起物なんです。そういうのを覚えると楽しくなってきますね。名前は青森弁で、「てこな(ちょうちょ)」、「くるびから(クルミの殻)」っていうものもあって、何だかかわいいんです。意味のあるモチーフが多いので、プレゼントにもいいですよね。あと、一番面白いのは刺すと裏の柄が反転するんです。全く違う模様が出てくるので、それも楽しいです。

―奥が深いですね。では作るに当たって、大変なことは?

材料を売っているお店がなかなかないことです。こぎん刺し用の針はちょっと太いし、糸も違うんです。だから始めのうちは、抜きキャンバスや目の粗い麻の生地を探したり、普通の刺繍糸や刺し子用の糸を使ってみたりと、試行錯誤でした。コングレスという綿の平織りの布は、都内で手に入るお店も結構多いのですが、目のカウントできるものになるとないので青森から取り寄せたり、観光も兼ねて買いに行ったりしています。針もないところが多いし、こぎん用の糸も関東で探すと10色くらいしかないのですが、青森にあるこぎん専門店のような手芸屋さんでは、すごく多く扱っています。生地も10色くらいあったりして、結構カラフルなんです。


こぎん刺しの表と裏。反転した裏面も美しい!
―ひとつ作るのに、どのくらい時間がかかるのですか?

モチーフは、こぎんでは「モドコ」と呼ぶのですが、1時間くらいです。慣れてきたので、大分早く刺せるようになりました。モドコがたくさんあると、丸二日くらいかかることもあります。普段は別の仕事をしているので、家に帰って来たらずっと刺していますね。土日で作れるときは一日部屋にこもって。平日の夜に刺すだけ刺して、お休みの日に仕立てたりもしています。

―制作はどのようにされているのですか?

少し大きめに布を切って、刺してから形にする感じです。私はひと針ひと針、裏を見ながら刺していきます。何目か取って引っ張る連続刺しなど、刺し方は生地によっても違ってきますね。硬い生地は、何針か取って刺すと縮んでしまうので。くるみボタンなら、1枚の布に何個か、一回り大きく刺してから切って仕立てます。小さすぎても大きすぎても刺しにくいので。たまに待ち時間がありそうなときには、A4くらいの大きさに切って、持って出かけることもあります。でも目を読まなくてはいけないので、薄暗いカフェだとできないんです(笑)。

―モドコのアイデアはどのように?

基本は全部伝統的な柄ですね。こぎんの図案集を参考に、一部分をくり抜いて使うことが多いです。「竹の節」っていう3本ラインのものやそれを少し変形させたり。組み合わせを考えるのも楽しいです。色も基本的には紺に白なのですが、新しい色合わせも試しています。りんごの柄は、もともとクロスステッチであった図案をアレンジして作りました。数種類のモドコが組み合わさった作品を作るときに、何となくのイメージはあるのですが、まず刺してから、まわりの空間をどうするのか考えますね。

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