木工作品で伝える、ぬくもりある暮らし―かぜまがり村工房
2009年11月02日02時01分かぜまがり村工房 村里幸雄さん/Yukio Murasato
1948年静岡県生まれ。1980年より独学で木の玩具を作りはじめ、1984年8月、大阪の「ギャラリー阿吽館」にて初個展を開催。1985年より、「かぜまがり村工房」の屋号を掲げ、木工の仕事に専念。その後、さまざまなギャラリーで展覧会を開催。現在は、自身のお店のほか、大阪の雑貨ショップ「カナリヤ」、クラフト&カフェ「らんじゅ」、茨木市「カフェ スウリール」、神戸「しあわせなふくろう」、「カフェパック」、須磨「小春日和」などで取り扱っている。ホームページ:http://kazemagarimura.com/
木との出会いから生まれる、一点ものの時計
小さな動物や家などのモチーフをアレンジした「物語の丘時計」。
もともとは建築関係の仕事をしていました。おもに板金の仕事です。仕事では金属を扱っていたのですが、趣味として木のおもちゃや家具を作っていました。車とか飛行機とか……。そうやって作りためた木工品の展覧会をギャラリーで開催したところ、その内容を新聞で取り上げていただき、そこから少しずつ、取材などを受けるようになりました。「作品のフォルムがいいですね」と誉めていただいたことを今でも覚えています。
―なるほど。お店を始められたのはいつですか?
私が作家として正式にスタートしたのは1985年。お店もその頃から始めました。
―かわいいお店ですよね。
ありがとうございます。お店は、自宅の1階の一角にあります。4畳くらいの小さなお店ですが、このコンパクトさが気に入っています。六甲山に抱かれた神戸の街の中にある、その雰囲気ごと味わっていただければうれしいです。
―どのような作品を作ってこられたのですか?
活動をスタートさせた1985年当初から、変わらず作っているのは時計です。昔、自分で作った時計を知人、友人にプレゼントしていたんです。その時計の評判がよく、自分の作品として作るようになりました。
―なぜ時計だったのですか?
なぜでしょう(笑)。もともと、時計というものが好きだったんです。
(左)木目や木肌を生かしてつくる時計は、すべて一点もの。 (右)森の仲間が集まったような作品コーナー。リスやどんぐりはブローチ。 |
―村里さんの作る時計のこだわりは、どんなところにありますか?
そうですね。私の作る時計は、木との出会いから生まれています。木肌、木目などを生かして、デザインを考えています。木が私に語りかけてくれるんです、と言ったらかっこよすぎるかな? デザインは、木の色や形、木の模様などを生かし、インスピレーション、ひらめきでデザインします。木の枝を秒針にしたり、振り子にしたり、文字盤を考えたり、ときどきリスや小鳥も登場しますよ。
そして時計は、ただ時刻を見るためだけの道具ではなく、一枚の絵のように眺めてほしい、そんな気持ちで作っています。ふと、「何時かな?」と眺めた時計の、木の年輪や形がおもしろいと、楽しくないですか? そこから物語が浮かんできそうです。秒針が進む様子や、振り子の動きをぼんやりと眺める……、そんな時間だって大切じゃないかなって思うんです。
―ステキです。ひとつひとつの作品に付けられたタイトルもかわいいですね。「お空でピピピ」とか、「ひとやすみ」とか、「リスはしる」とか……。
作品のタイトルは、出来上がった時計を見て、奥さんが名付けてくれます。こちらも、インスピレーションで決まるようですよ。
―最近作られた作品には、どんなものがありますか?
パンの形の時計があります。これまでの森の中のイメージの時計などとは、また違ったテイストです。この作品は、知り合いのパン屋さんに頼まれて作ったものなんです。お店に飾っていただいているようです。
(左)わずか4畳の小さなショップ。 (右)新作の「パンの時計」。キッチンに飾りたいかわいらしさ。 |