絵を描くように、色とりどりの刺繍糸と布で表現―衣装作家・神尾茉利さん
2010年12月06日02時01分想像ひとつで世界が変わることを、作品で提示していきたい
芦屋 SPACE R「旅のクチュール展」にて展示中の作品。
オーダーしてくださるお客様には、最初「どんな一日がステキな一日だと思いますか?」という質問をしていました。お客様のライフスタイルや思い、考え方とか、いろいろ話して、その方の雰囲気にあった作品を作りたいと思いながら制作していました。色使いの好みとかは、もう人それぞれなので、逆に勉強になった部分もたくさんありました!
また飼っているワンちゃんやネコちゃんの写真を持ってきて、「作品にしてほしい」というお客様がいたり、お題をいただいて考えるというおもしろさも経験しました。
―もう受注されていないのは残念ですが……。
そうですね。とりあえず、今はお休みしています。刺繍という表現での作品づくりは続けていくつもりです。新しいところに向かって進んでいくのが好きなので!
―作品のこだわりは、どんなところですか?
ぶりっこしないこと(笑)。かわいいだけのものは、好きじゃないんです。表現の見た目では、幸福さと裏切りを重要視しています。スピッツの『スパイダー』という曲が好きなんですが、ご存知ですか? 爽やかで親近感のあるボーカルの声と、明るさに満ち満ちた演奏に反して、歌詞の中に説明的な要素は一切なく、メッセージ性も少なく、ネガティブなワードが多いのに、どこかの幸福な世界を想像してしまう曲です。そんな曲のように、私も、一見すごく惹かれる見た目で、よく見ると毒っぽい、かわいいだけじゃない、そんな作品を、もっと上手に表現することを目指しています。
(左)刺繍糸はドイツのアンカー社のものを愛用。 (右)スケッチは主にモノクロで。 |
―お客様の反響はいかがですか?
私の作品は身に付けられる形態のものも多いのですが、お客様から「もったいなくて眺めています」という声をいただきます。それでも多くのことを感じていただけていると思うので、うれしいしいですし、励みです。単純に眺めることで至福を得たり、自分のものにしたいという欲求からコレクトしていただけることが喜びです。
開催しているワークショップで多い反響は「刺繍にはまりました」というもの。そんな声も、とてもうれしい。私の刺繍は難しいステッチを使わず自由にチクチク刺すだけなので、今まで刺繍に尻込みしていた方に楽しんでいただけるようです。「ワークショップの帰りにフェルトと糸を買いました」と言ってくださる方や、次にお会いする時に自宅で作った作品を持って来てくださる方もいます。本当にうれしいです。
―こだわっている、特別な道具はありますか?
大事にしているのは、いただき物の裁ちバサミです。京都の老舗「菊一文字」のもので一生以上使えると思います。刺繍糸は「アンカー」というドイツのメーカーの色が好きです。発色がきれいなんですよ。
(左)ハサミは用途によって使い分けている。 (右)「師匠からいただいた色鉛筆です」。 |
―作品制作で、もっとも影響を受けている人はいらっしゃいますか?
中学時代よりお世話になっている現代美術家・椿昇氏です。純粋さとまっすぐさに、ずっと憧れ続けています。
―いつもどんなシーンを想定して作品を考えていますか?
想像される世界の美しさを考えて制作しています。それ以外のこだわりは特にないので、作品の形も絵画のようなものであったり、アクセサリーやカバンのように身に纏えるものであったり、さまざまです。ただ、より日常に共存できる作品になるといいなと思っているので、身に纏える作品はとても興味があります。
―今後の活動のご予定は?
5月29日まで、芦屋のギャラリー「SPACE R」で企画展「旅のクチュール展」に参加中です。モデルであり手芸家でもある楓美さん企画の展示で、以前から素敵だなと思っていたクリエイターの方々とご一緒できて、とても嬉しいです。また、7月には神戸で個展『おなかのなかの大草原』を予定しています。テーマに合わせてさまざまなイベントも開催しようと計画中です。
下半期は制作に集中して、来年は今までと違う展覧会をしたいと思っています。ワークショップは毎月何カ所かで開催しています。今は関西での開催が多いですが、久しぶりに遠くへも出張したいですね。
―今後の目標を教えてください。
想像ひとつで世界が変わることを、作品で提示していきたいです。まだまだですが、もっといい表現をできるようになることが最大の目標です。
(取材/いなだみほ)
【イベントのお知らせ】
gallery COLOR×神尾茉利 企画
『おなかのなかの大草原』
『食べること』をテーマに、さまざまなジャンルでの表現を行います。
神尾さんは会期中、『食べること』をテーマにした新作を、お花屋さんの協力のもと、植物とともに展示予定。
会期:2011年7月20日(水)~7月31日(日)
会場:gallery COLOR
http://gallery-color.com/
gallery COLOR×神尾茉利 企画
『おなかのなかの大草原』
『食べること』をテーマに、さまざまなジャンルでの表現を行います。
神尾さんは会期中、『食べること』をテーマにした新作を、お花屋さんの協力のもと、植物とともに展示予定。
会期:2011年7月20日(水)~7月31日(日)
会場:gallery COLOR
http://gallery-color.com/