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ひとつひとつ手づくりする、革のボタンと小物―saji

2008年12月08日20時01分
「ボタンから、手づくり」をコンセプトに、ボタンにこだわり、独自のセンスでボタンと、ボタンをモチーフにしたアクセサリーや小物など、様々なアイテムを作っている「saji」の鈴木寛代さん。鈴木さんがボタンにこだわる理由や、ボタンにかける思いとは? 自身の作品や、大好きなボタンのコレクションが彩る、まるでギャラリーのようにおしゃれな鈴木さんのアトリエ兼ご自宅におじゃまし、楽しいお話をたっぷり伺いました。

saji 鈴木寛代さん/Hiroyo Suzuki

ボタン作家。1979年、東京生まれ。2002年、日本大学芸術学部写真学科を卒業し、2003年からボタン制作を始め、「saji」を立ち上げる。2006年9月に「くらふと博覧会」に出展以降、「Button Inspiration」(銀座 acギャラリー)や「ART MARKET」などにも出展。今年1月には個展「ひつじが1ぴき」(益子 もえぎ)を開催した。「saji」の商品は「ha-na」(自由が丘/西宮ガーデンズ)、「もえぎ」(益子)、「陶庫」(釧路)、「ボタンの博物館ミュージアムショップ」(浜町)で取り扱いがあるほか、ホームページでもオーダーを受けている。
ホームページ:http://www.sa-ji.com/

失敗を繰り返し、独学で身につけた革ボタンづくり


牛革で作った、独特の風合いがかわいいボタン。
下は、花柄のステッチも新鮮!
―鈴木さんがボタンに興味をもつようになったきっかけは?

子どものときから同じものをたくさん持っているのが好きで、集めていたんです。例えば、鉛筆1ダースとか、シール100枚とか……。それが大人になってくると、ボタンのような、ちょっと細かいものを集めるようになって。

集めるのが好きになったきっかけは、私が4歳か5歳くらいのときに、おばあちゃんと一緒にスーパーに行って、その日のおやつに杏仁豆腐を作ろうと材料を買ったんですけど、2袋あれば足りるのに、おばあちゃんはストック分も一気に、そのとき棚にあった5袋全部を買い占めたんですよ。それがすごく印象的で、ストック好きになったというか(笑)。今でも予備の分がないとダメなんです。

―そうだったんですか(笑)。では、ボタンを作ろうと思うようになったのはなぜですか?

以前、学芸員の仕事をしていたんです。学芸員というのは、私の場合、写真学科出身だったので、写真展の飾り付けやキャプションを作ったり、展示をする仕事なんですが、ひとつの写真展が完成して、自分では頑張ったなと思っても、その写真展は写真を撮った人のものであって、自己表現ではなかったんですよね。本当は私自身、作ることが好きなので、だんだん縁の下の力持ち的な仕事をしている自分に腹が立ってきまして(笑)。

それで、ゼロから物を作る人になりたいと思ったんですよね。写真は勉強していましたけど、写真も“カメラが撮っている”という感じがして……。じゃあ、なにが好きなんだろうって考えたときに、ボタンだな、と。ボタンは、例えばシャツだったら、6個とか7個とかついて、初めて一枚のシャツになる。世の中で同じところに複数存在して許されている唯一のものがボタンではないかなって。そんなボタンの性質と、同じ物をたくさん持っているのが好きという、子どもの頃からの自分の性格がものすごく合っていたんですよね。

あとは当時、髪の毛が長かったので、買ってきたボタンにゴムを通して髪留めを作っていたんですけど、ボタンを眺めていて、「丸に穴が空いてるだけだから、これは作れるかもしれない」と思ったんです。最初は自分の趣味で作りはじめたんですけど、人にあげるようになったら好評だったので、これはもしかしたら売れるんじゃないかなって。

―革のボタンの制作は、独学で始められたんですか?

そうですね。誰からも習ったことがない上に、本を読んだこともなくて。なんとなく道具屋さんに行って、感覚だけで材料をそろえて(笑)。何もわからない状態で試行錯誤しました。革は水につけると柔らかくなって扱いやすくなるんですが、それも、革を磨いていたときに手が滑って、偶然置いてあった水の中にぽちゃんって入ってしまったときに、そのあと、なんだか柔らかくて調子いい、という出来事があって……(笑)。失敗を繰り返して進んできたものなので、未だにこのやり方が合ってるのかどうか定かじゃないんです。


(左)作業をしているデスクにも、ボタンの作品やストックの数々が!
(中)ボタンをくり抜いた後、使いかけの素材。 (右)牛革や羊革など、たくさんストックしてある革素材。

―でも、こんなステキなものが独学で作れるなんてすごいですね。

革に関しては独学ですね。革をくり抜くのってけっこう大変で、最初はゴム板を敷いて抜いていたんですけど、大きいものはなかなか抜けなくて。なんでだろう? と思っていたら、牛革屋さんで初めてちゃんと革を一頭買いしたときに「何の上で抜いてるの?」って聞かれたから、「ゴム板の上でハンマーを使って」と言って持っていたものを見せたら、「こんな軽いのじゃ抜けないよ」って言われたんです。そして「本当は革は切り株の上で抜くんだよ」って、大きな切り株をくれたんですよ(笑)。

―それは、いい出会いがあったんですね。素材は最初から革だったんですか?

はい。いきなりボタンを作りたいといっても、電動工具はなかなか揃えられないので、革や刺繍のくるみボタンなど、手作業でできるものから始めたんです。去年初めて、焼き物のボタンを作ったんですが、今後は樹脂や金属とかジャンルを広げていろんな素材を使ってボタンを作りたいです。


(左)革をくり抜く際に使う道具。右側の切り株は、友だちのお父さんが切った桜の木を1年乾燥させて作ってくれたもの。
(右)ボタンの円や穴をくり抜く際に使う道具、ハトメ(穴開けポンチ、とも呼ばれるそう)。


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