ひとつひとつ手づくりする、革のボタンと小物―saji

2008年12月08日20時01分

「欲しいんだけど売ってない」というものを作りたい

―ところで「saji」という名前の由来は？

略せない名前にしたかったんです。あと、なぜか「じ」をつけたくて。通勤電車の中でずっと唱えていたら、「さじ」がちょっとピンときたので、家に帰って辞書で調べたら、「匙」と、「些事」というのがあって。その「些事」が「とるにたらない、つまらない」っていう意味で、ボタンは私の中ではすごく大事なものですけど、世の中の人にはきっと、とるにたらないものだなって思って、ぴったりだなと。だから「些事」の意味はマイナスなんですけど、私が頑張ることでみんなが興味を持ったり、楽しくなったりしてくれたらいいなっていう願いも込めています。

―ロゴもかわいいですよね。

原案は自分で考えて、形にしてくれたのは、私の双子の相方くんです。彼は商品パッケージやPOPのデザインの仕事をしていて、普通にイラストレーターが使えるので、紙ものは全部やってもらっているんですよ。ちなみに「こさじ」のロゴは別のデザイナーさんが作ってくれました。

―「こさじ」は「saji」とは、ちょっと違うラインなんですよね？

“sajiが作ったけど、ボタンじゃないもの”が、「こさじ」ですね。私は基本的に「ボタン屋です」と言っているので、例えば、リボンのデザインのものを作ったりすると、「どこがボタンなの？」ってつっこまれることがあるんですよ。そういうときは、「これは『こさじ』です」って（笑）。一時期ちょっと苦しかったんですよね。なんでもかんでも無理矢理ボタンにこじつけていかなきゃいけない、ということが。でもそのうち、「作りたいものを作ったほうが楽しいから、それにボタンがついてなくてもいいじゃん！」と思えるようになりました。

（左）お気に入りのボタンやベルトのバックルなどをきれいにディスプレイ。 （右）これまで集めてきたヴィンテージのボタンなども、きちんとパッケージに入れて飾ってある。

―なるほど。では鈴木さんにとって、手づくりするときの楽しみは何ですか？

イメージしたものと、実際に作ったものがどれだけ近くできたかというのと、同じものをたくさん作るので、できあがったときの達成感もあります。あとは、パッケージまで含めて作品だと思っているので、最後にラッピングしているときが一番楽しかったりしますね（笑）。それに学芸員を経験して、“見せ方”の大切さは勉強してきたので、一個のものでも、そのままポンとおいてあるよりも、袋にちゃんと入っていると違うかなと思います。手に取ってもらうための印象も大事ですが、お家に持って帰ってからもカワイイものになるよう目指しています。

あと、なにかを作ると、その日にあった嫌なことは全部忘れちゃいます。けっこうストレス解消にもなっていいんですよ（笑）。他のことで疲れたときこそ、なにかを作って「私はこれを作ったから疲れたんだ」と思ったほうが気持ちよく眠れるんですよね。だから毎日、なにか作ってますね。

（左）牛革紐のデジタルカメラストラップ。 （右）「こさじ」のラインで作っている羊革のヘアピン。羊革を使うことによってカラーバリエーションも増えたそう。

―最後に、これからの抱負を教えてください。

「saji」のことを革屋だと思っていらっしゃる方も多いんですが、そうではないんです。今は革ものが好きだからやっているんですけど、陶芸も１年ちょっと通っていますし、先月からシルバーの教室にも通い始めました。やっぱりこれからは使う素材ももっと広げていきたいですね。あと具体的には、今年はカメラの小物類を充実させたいです。カメラケースとか、ストラップもいろんなカメラに対応するものを。CFカードとかSDカードをぶらさげて、キーホルダーっぽく持ち歩けるようなものを作りたいなとか。あとは「欲しいんだけど売ってない」というものを作りたいです。友だちと会って話す中でアイデアが出てきたりもするので、欲しいと思ったものをいろいろ作っていきたいですね。

（取材／田辺香）