タイの伝統工芸カービングで繊細で絢爛な作品作り―鬼丸信乃さん
2007年12月02日07時01分鬼丸信乃さん/Shino Onimaru
『カービング スタジオ エス』主宰1999年、夫の転勤に伴い暮らしていたタイでカービングに出会う。帰国後もカービングを続け、ホームページや作品展での発表、タイでのコンテストへの参加など積極的に活動するほか、教室『カービング スタジオ エス』を開き、約90名の生徒にカービングの技術と素晴らしさを伝えている。
ある日突然やってきた、カービングとの出会い
母校マリサのタイ日交流会に参加したとき、
タイの民族衣装を着て(一番右が信乃さん)
1999年から3年間、夫の転勤でタイのバンコクに在住し、せっかく暮らすのだからタイの文化をなにか学びたいと思っていました。そんなとき、友人に誘われてカービングの存在を知り、習うようになったのがはじめです。
―もともと手作りはよくされていたのですか?
いいえ。お料理が好きなぐらいで、とくに手作りをよくしていたわけではありませんでした。ところがカービングをやってみたら、彫っている間、気持ちが集中し、それがとても心地よかったんです。さらに出来上がった作品はきれいだし、彫ることはおもしろいしで、すっかりハマってしまいました。ある日突然、ばったり出会ってしまったという感じですね。あれからもう8年も経つなんて!
デザインが浮かんだら、忘れないうちにどこでもメモ
オペラをイメージしてスイカを彫った作品
2007年制作
とても大きな部分を占めていると思います。まずレッスンの時間があります。それとは別に、自分の作品作りの時間もあります。作品を彫る日は気持ちを集中したいので、教える日を決めたら、事前にイメージやデザインを少しずつ形にしておき、その日は彫ることだけに集中します。このように、ある程度計画的に彫ることが多いのですが、美術展を観に行ったときなどは、なにかにインスピレーションを受け、そのまま戻ってきてすぐに彫りあげてしまうこともあります。
自宅でカービングをするのはリビングで
リラックスしているときにデザインが浮ぶことが多いみたいです。例えば、美容室で髪の毛を洗ってもらっているときに、もやもや~っと浮かんできたり。そんなときは「ちょっとメモをかしてください!」とお願いして、忘れないうちに書き留めるんです。お店の方に「夢占いの人みたいですね」って驚かれることもあります(笑)。
―タイの伝統的なデザインや彫り方というのもあるのですか?
S字のような曲線を多様したデザインが豊富です。花や大きくうねった葉など、生命力を感じるモチーフのデザインも多くあります。
《左》チョコレートやココアをいれて作った石鹸を彫って
バレンタインのプレゼントに。
まるで本物みたいに美味しそう! 2007年制作
《右》ヒョウタン形のカボチャ
「バターナッツ」で壺を彫った作品 2006年制作
―カービングでは、石鹸とフルーツを材料として使いますが、彫るにあたってそれぞれこだわる点や、違いはありますか?
フルーツの場合は、半分ぐらいまでは事前に考えてあったイメージで彫っていき、あとはそのときの素材の状態にあわせて変えることが多いです。例えば、スイカを彫りはじめたときに、皮の緑から白、赤へのグラデーションに色気を感じたら、その色気を生かすようにデザインを変えていきます。フルーツはとにかく色っぽくあってほしいと思っています。
逆に石鹸の場合は、あらかじめ決めていたテーマやイメージのまま進むことがほとんどで、ナイフで彫ったときに、表面がツヤっと光るように心がけています。石鹸はツヤ感があり、美しく、可愛らしくあってほしいです。香りも魅力のひとつですね。