物語の世界へといざなう刺しゅうのぬくもり ― annas

2010年10月31日13時01分

自分が感じた感動をそのまま作品に反映している

―刺しゅうをほどこした布小物から広がって、最近はアニメーションを制作されているそうですね。

私は結構、新しい物好きみたいで。手芸の世界をベースに持ちつつ、いろんなものに興味がわくんです。だから、ひとつに絞れないというか……。ただ、いろんな人、モノに興味を持ちますが、ピンポイントで好きになることが多いですね。「この人のこんなところが好き」、「このモノのここが好き」といった感じで……。結局それが刺しゅうの新しい材料になってることが多いんです。

その中のひとつが、チェコアニメ。数年前に「チェコアニメ祭」という映画を見に行ってから、DVDを集めるほど大好きになりました。

―どういったところが魅力ですか？

登場人物や動物の、目の動きとか、ほっぺたをポリポリと掻いたりするしぐさが、とってもかわいいんです！ そんなチェコアニメの素朴であったかい雰囲気を刺しゅうアニメで表現できたらいいなと思って、今は試行錯誤しているところです。

―物語のワンシーンの刺しゅうから、今度は刺しゅうで動きを作っていくということでしょうか？

そうですね。『赤ずきん』や『ブレーメンの音楽隊』、『白雪姫』などは、童話や絵本をテーマに、その物語のワンシーンを切り取って、刺しゅうで表現していましたが、アニメでは、刺しゅう作品に動きを加えないといけない。今度は、刺しゅうよりもパソコンの勉強をしないといけないので（笑）、まだまだです。でも、たくさん作ればうまくなるんじゃないかと思うので、ゆっくり自分のペースで納得のいくものを作れるようになればいいなと思っています。

―ほかに、作品作りにおいて、インスパイアされている人、モノなどはありますか？

やはり絵本ですね。『クマのプーさん』や『ピーターラビット』などの自然あふれる絵本や『赤毛のアン』、『やかまし村』、『大草原の小さな家』の世界感が好きです。自分がその世界に入り込んで、主人公になりきって、一緒に冒険したり、遊んだり……。自分が感じた感動をそのまま作品に反映しているつもり。それを感じ取ってもらえたらうれしいなと思います。

（左）作品作りをしている自宅アトリエの風景。 （右）東京・西荻窪「モイスェン」でのワークショップ風景。

―最近は、どのようなお仕事をされていますか？

刺しゅう作品を雑貨ショップに委託販売をしてもらう以外に、図案を提案するお仕事やワークショップが増えていますね。ワークショップでは、刺しゅうの楽しさを味わってほしいなあと思います。無心になれるひととき、完成する達成感とかも、知ってほしいです。かわいいものを自分で作れるとうれしいですよね！

―作品を買ってくださった方に、どのように楽しんでほしいですか？

生活の中に取り入れて、日々の生活がちょっぴり楽しくなるような感覚で、作品が存在できればうれしいです。そして、ぜひワークショップに参加していただいたり、私の本を見てもらったりして、手作りの楽しさを一緒に味わってほしいです。

―今後の目標を教えていただけますか？

なんでもチャレンジしていけたらいいなと思います。刺しゅうアニメのように 刺しゅうを新しい形の見せ方に変えたり、おもしろいことや楽しいこと、心地よいことを刺しゅうで表現できるように、常にアンテナを張っていたいと思います。また、ほかのジャンルの方とコラボもしてみたいです！みなさんに手作りを楽しんでいただく提案もしつつ、作品としての刺しゅうも作っていけたらいいなと思います。

（取材／いなだみほ）