さくらいあかねさんの、ほっこりやさしいステンシル作品
2009年12月03日01時01分さくらいあかねさん/Akane Sakurai
ステンシル作家武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。印刷会社、菓子メーカーを経て、パレットクラブでイラストを学びながら、刺繍とステンシルを中心にし た作品の制作をはじめる。昨年は銀座のギャラリー『artist in』にて「ブックカバー展」に参加し、1月には大学時代の友人とともに、西荻窪『Gallery MADO』で「たびじたく展」を開催した。
ホームページ:http://akanesakurai.ciao.jp/
ステンシルは、自分が出したい雰囲気を思った通りに出せる
ギャラリー『artist in』の「ブックカバー展」での展示風景。
はい。小さいときから、なにかと手を動かすことが好きでした。美大ではデザイン科を卒業して、印刷会社では販促ツールのデザインを、お菓子メーカーではパッケージデザインを担当していました。お仕事は、周りの人に恵まれ、やりがいもあったのですが、いろいろと制限がある中で、妥協したり、時間に追われたり、気持ちに余裕のないものづくりの仕事に疑問を持っていたんですよね。その反動もあって、「なんの制限もなく、自分の好きなものを作りたい!」と思うようになって。それから休みの日にはアクセサリーを作りはじめて、友だちの誕生日にプレゼントしたりしていました。それで、「やっぱり手作りはいいな~」と実感しまして。結婚後、会社を辞めて、「パレットクラブ」に通い、改めてイラストの勉強もしました。
―ステンシルを手がけるようになったきっかけは何だったのでしょう?
小学生のとき夏休みの自由研究で、当時、趣味でステンシルを始めていた母に教わりながら、一度作ったことがあるんですよ。それからずっとやっていなかったんですけど、「風合いがかわいいな」という印象は残っていて、「イラストを始めたい」と思ったときに、ふと思い出したのです。アナログテイストなイラストでは、シルクスクリーンとか、版画とか、コラージュとか、他にもいろいろと手法はありますが、ステンシルは大きな機械や工房なども必要なく、比較的手軽に自分でできる、自分が出したい雰囲気を思った通りに出せるというのもあったんですよね。
―なるほど。実際にやっていて、ステンシルの魅力とはどんなところだと思いますか?
いちばんは、やっぱり風合いがやさしくなることでしょうか。ステンシル独特の手法で、キワを濃いめに、中心を薄めに色付けると、描いているものがやさしい雰囲気に仕上がるんです。
―さくらいさんは、ステンシルに刺繍も組み合わせてらっしゃいますよね?
はい。基本的には、ステンシルで描いた絵のふちどりとして、刺繍を施すんです。ステンシルだけだとちょっと弱いので、線をはっきりさせたいときになのですが。この刺繍との組み合わせも、良かったかなと思っています。面はステンシルで、線は刺繍で、と決めて描くと、刺繍がステンシルの中で良いアクセントとなって、ステンシルのやさしい風合いの世界に、キリッと緊張感が出てくるので。その相乗効果も魅力のひとつですね。
(左)和裁をやっていたおばあさまからもらったという道具箱には、刺繍糸などをストック。 (右)愛用しているステンシルなどの道具。 |
―たしかに、アクセントになっていますね。ところで、コーヒーとペンの作品もユニークですが、こちらをはじめたきっかけは?
コーヒーカップをテーブルに置いたときにつく、底の円の跡をデザインしたカフェのショップカードを見かけて、かわいいなと思ったんです。そこで、コーヒーを絵の具代わりにして使ってみたら、独特の滲みが出てきたんですよ。もちろんコーヒーじゃなくても、セピア色の絵の具を使ってもいいのですが、コーヒーは香りもいいですし。
―そうだったんですか。コーヒーをたらして、偶然生まれる感じもおもしろいですよね。でも、かたちを作るのが難しそうですね。
そうですね。書道のような感じで、同じかたちには絶対にならないですね。
―あと、さくらいさんの作品は和のテイストのものが多いですよね?
好きなんですよね。どうしても和風が多くなっちゃいます。こけしも好きなモチーフですし。あと、映画の『男はつらいよ』が好きなので、以前、寅さんとサクラを刺繍したハンカチを作ったこともあります(笑)。寅さん好きの友だちや夫にプレゼントしたりしましたね。ハンカチもダボシャツカラーで!
(左)珈琲とペンで描きあげた動物の作品。 (右)江戸時代を舞台にした映画のシーンを描いた作品。着物の濃淡にも風合いがある。 |