ハンドメイドレシピと手作り情報サイト

イマジネーション広がる、nuicoのユニークな人形たち

2009年12月07日15時01分
素材選びからデザインのディテール、キャラクター設定に至るまで、とにかくこだわりが満載の「nuico」の人形たち。それらは個性に溢れ、ひとつひとつが単なる“人形”にはおさまらない、特別な愛着を感じさせてくれるものばかりです。そんな唯一無二の「nuico」ワールドが創り出されるアトリエを訪れ、その独創的な世界観に迫りました。

nuico/ヌイコ

人形作家
2009年、「縫い」の「ヌイ」に、コドモのような視点を持つ作家自身と、制作する人形をコドモのように思うことの「コ」を合わせて「nuico(ヌイコ)」という名前で活動をスタート。ぬいぐるみの手法を使った彫刻的な立体作品や、物語性のある空間演出を手掛け、常に自由なイマジネーションにより様々な世界を作り出す。オーダーメイドも請けている。
ホームページ:www.nuico.info
Art Jam People:www.artjampeople.com

「人形というより、リアルに存在するものとして作ることのほうが大事」


妄想癖のある、ちょっとキテレツな女の子・ティルダ。
―まず、nuicoさんが人形を作り始めたきっかけは?

古い記憶をたどると、小学生くらいのときから、フェルトでちっちゃなテディベアとかを作ったりはしていましたね。でも一時期で飽きてしまって。それから大学3年生のとき、小さな劇団が小道具係を募集していて、特殊メイクに興味があったので、応募したんですよ。でも、実際に行ってみたら、「ヨーダの操り人形をセサミストリートのような雰囲気で作ってほしい」と言われて。そんなものは作りたくないなと思ったんですけど(笑)、応募したからにはやらなくてはと。それで作ってみたら、自分でもびっくりするくらい、うまくできたんですよ(笑)。

―そこからハマっていったんですか?

そうですね。私、すごく性格がおおざっぱなので、決められたものを作るのがイヤなんです。だから思いついたときに変更できる素材がいいなと思って。布は、他の素材に比べるとすごく自由だし、縫ったり、綿を詰めたりすることで、形が自由にできるじゃないですか。それでいて、やわらかい素材だから、かわいくも見える。それ以降、大学時代の半分は、人形だけを作っていました。というのも、これはずっとやっていけるなって、最初に作ったときに確信したんです。大学の教授にも、「人形以外のものは、もう作るな」って言われたりもして、「やっぱり自分はぬいぐるみだけを作っていけばいいんだ!」って。ただ、そんなに需要がないじゃないですか(笑)。「どこに就職するんだ?」って。そんなとき、ヤングアーティスコラボレーションとしてセレクトショップのウィンドウディスプレイに携わらないかというお話をいただいて。そこから本格的に、という感じですね。

―そして昨年から、「nuico」として活動をスタートしたわけですね。作品を見たときに、ヨーロッパっぽい雰囲気を感じたのですが、インスピレーションはどこから受けるんですか?

いろんなところから受けるんですが、展示の場所が決まったら、そこから決めることも多いですね。あとは例えば、アレキサンダー・カルマっていうロシア人のアーティストが指を使ってひとりでサーカスを表現している映像があるんですけど、そこからインスピレーションを受けて、「ロシアのサーカス団の女の子が持っている、ボロ小屋の廃材から作った人形」というテーマの人形を作ったこともあります(笑)。


今年企画展に参加・展示した「Lady Mirror」の作品とスケッチ。
スケッチの段階から、細かい性格、服装、名前まで決める。
―どれも設定が細かくておもしろいですよね。やはり設定は大事ですか?

そうですね。人形というより、リアルに存在するものとして作ることのほうが大事で。自分の中では手芸とは一線を引いて、それよりもアートっぽい感覚で見てもらいつつ、でもアートすぎずで、中間をねらいたいなと思っているんです。ただの“うさぎちゃん”ではなく、もっと人間に近い“やさぐれたうさぎ”とか(笑)。完全じゃないものをできるだけ作るようにしています。完全なものを作るのであれば、絶対、工場で作ったほうがいいですし。

―たしかにそうですね。他にこだわりといえば、何でしょうか?

こだわらなくちゃいけないことはたくさんあります。ひとつひとつの素材に対して意味がないと、作品として弱くなってしまう。例えば、生地をストライプにしたのにも、「サーカスのテントをインスピレーションしたものを選んだから」とか。あとはお金のないサーカス団という設定だったら、廃材やパーツに買ってきた木を削って、色を塗って作ったりもしますし。「なぜこの素材にしたの?」って聞かれたときに、すべてちゃんと理由がないと、作っている意味がないんです。逆にいえば、こだわりがない部分がないものにしないといけない。本来は自分で素材から作れればいいんですけどね。今はまだコスト的に難しいので、将来的にできればいいなって。

――なるほど。ちなみに、これまで何体くらい作ったんですか?

相当作っていると思うんですけど、数えたことがないからわからなくて……。一度、卒業制作で100個くらいのパーツをつなぎ合わせて作った筋肉質のヒーロー人形があって、一体だけどパーツごとに一個の人形みたいに作っているから、数にするとすごいでしょうね。ちなみに、その作品名は「HYPER HERO」です(笑)。

―また独創的ですね(笑)。

パーツ一個が人形として成立しつつ、つなぎ合わせたもので、2メートルくらいある人形を全部で5体作りました。それも空間からイメージしなくちゃいけなくて、黄色の壁だったから、そこからヒーローがでてきたら楽しいな、と思って黄色に。すごい俊足で動けるという設定にしたので、黄色は光のイメージでもあるんですけど。5体のうち残りの四体は残像、つまり影なんです。


美大の卒業制作で作った「HYPER HERO」。
100個くらいのパーツを組み合わせて作ったとは驚き!

1 2 >>

nuico  , 人形  , ArtJamPeople  , 田辺香  ,

最新情報をSNSでも配信中♪

twitter

このサイトに掲載された作品に関して、その作品の作者以外の方は写真やデザインを複製して販売したり、商用利用はしないでください。
個人の趣味の範囲でお楽しみいただくようお願いします。

Copyright © 2008-2024 Atelier, Inc. All Rights Reserved.