ちいさなペーパークラフトに「おめでとう」の気持ちを込めて―洋梨雑貨店

2009年12月08日05時01分

“人に思いを伝えるためのカード ”を作るということ

―「365日のバースデーBOX」は本当に小さくてかわいいですね！ 繊細な手仕事ですが、小さい頃から手先が器用だったんですか？

小さいものを作ることが大好きでした。フェルトのマスコットや、ビーズで小物を作ったり。でも友だちの方がうんと上手だったから、そんなに器用ではなかったです。「負けたくない！」という気持ちから、今のような作品ができたのかもしれないですね。

―作品には、手作りのあたたかみと同時に精密さも感じられますね。

精密に見えますか？ 実は仕組みは単純ですし、ボンドでしっかり接着しますので、落っことしても意外と丈夫なんですよ。唯一重点をおいていることは、細部まで目を配ることで、幼稚な紙工作で終わってしまわないように気をつけるようにしています。

―どんなシーンを想定して作品を考えていますか？

贈り物に添えるカードとして、贈った方と贈られた方が顔を見合わせて「フフフッ」と笑っているシーンを思い浮かべています。

―「365日のバースデーBOX」は、まずは自分のバースデーのケーキを探したくなりますね。

イベントなどで、お客様の様子を伺っていても、みなさんそうですね。まず、自分の誕生日を探して「わ！」って感激されて、そのあと、友達の誕生日や恋人の誕生日、それから家族の誕生日のケーキを探して買ってくださるんですね。そんな姿を見ると胸が熱くなりますね。大切な人を思い浮かべて、それぞれの誕生日のギフトボックスを探してくださるのって、温かな気持ちになります。

―お家の形には、どんな思いがありますか？

ブランド名の「洋梨」同様、単純に家の形が好きなんです。

―そういえば、作品を委託されている神戸のギャラリーショップ「ちいさなアトリエ＊蕾」さんもかわいい家の形ですね。

そう。「ちいさなアトリエ＊蕾」さんは、私が参加していた名古屋での展示会に偶然来てくださっていたんです。私の作ったお家の形のカードを手にぶるぶる震えている女性がいる！ と思ったら、その方が「ちいさなアトリエ＊蕾」のオーナーさんでした。「店が、作品になってる！」と感激してくださって……。「ちいさなアトリエ＊蕾」さんは、１坪ほどの家の形をした小さなお店なんですよ。“小さな家”の形が引き寄せた運命!?

―制作に使用されている道具には、特別なこだわりはありますか？

家にあるハサミや、近所の文房具店で手に入るカッターナイフなど、ごくごく普通の道具なんですよ。でも、同じものをずーっと大事に使い込むので、それを家族に勝手に持ち出されたりすると大噴火します（笑）！

（左）洋梨グッズのコレクション。アイデアをふくらませられるよう、お家モチーフの小物はいつも目に入るところに置いている。 （右）2010年６月に出展したクリエーターズマーケットの様子。

―作品制作においてもっとも影響を受けているものは、何でしょう？

外国の街並や風景です。ヨーロッパのかわいい家がずらりと並んでいる映像や、アメリカの映画やドラマに出てくる家やインテリアをすごく参考にしています。友人が暮らすアメリカに遊びに行ったとき、郊外の一戸建てのお家のかわいらしさに一目惚れでした！ 三角屋根の黄色い家に、白いフェンス、緑の芝生にブランコがあって……といった、物語の中に登場しそうなお家が実際にたくさんあるんです。テンションがかなり上がりました！ 最近では、テレビの旅番組で見たクロアチアの街並み。石壁の赤い屋根の家がステキで、クロアチアを旅してみたくなりました。

―制作において、行き詰まったときはどうされますか？

最近、ランニングを始めたんですよ。運動嫌いなのに！ 気分がスカッとして気持ちが切り替わり、体にも心にも良いということにやっと気づきました。運動も捨てたもんじゃないですね。

―今後の目標を教えてください。

目標は、「もっと丁寧に、もっとおもしろく、もっといいアイデアを！」です。何かの本で「アイデア＝愛デア」と読んで、とても共感しました。人に思いを伝えるためのカードを作っているわけですから、この気持ちをいつも心に忘れずにこれからも制作していこうと思います。

（取材／いなだみほ）