生活を楽しくするアイデアの発信者―上島佳代子さんのハンドメイドスタイル
2009年12月09日02時01分
上島佳代子さん/Kayoko Kamijima
コピーライター兼雑貨アーティスト。『アトリエ ペルメル』主宰。テーマとニーズに合わせて、自由な発想でモノを作りだす、雑貨界のクリエーター。10年間の広告制作会社勤務の後、パリに移住。帰国後、フリーのコピーライターをしながら、雑貨アーティストとしてデビュー。雑誌、広告、テレビで活躍。『アトリエ ペルメル』のペルメルとは、フランス語で“雑多な”という意味。紙、布、木、ワイヤー、さまざまな素材を使って、布雑貨やインテリア、ガーデン雑貨など、生活が楽しくなるものを作り続けている。独自のアイデアを形にする工夫を伝授すべく、「リネンと優しい時間。」「リネンとパンと焼き菓子と。」などの教室も行っている。(只今秋冬コースのメンバー募集中!)10月中旬に『リネンと過ごす優しい時間~使う・つくる・訪ねるリネン手帖』(誠文堂新光社刊)を出版予定。ホームページ:http://www.atelier-pelemele.com/
作る楽しさより、創りだす面白さ。興味と好奇心がモノ作りの原点

パリのアトリエ風な内装。
お気に入りの音楽を聴きながら作品づくりを進める。
話せば長いのですが(笑)。もともと小学生の頃から手作りが好きでしたね。かといって、図工が好きというわけではなかったんですよ。先生に課題を与えられて作るのではなく、自分で自由に作りたかったんです。アルミの空き缶でオブジェを作ったり、何か気になるものがあったら、「こうしたら、面白い」というのが楽しくて。それが原点かもしれません。雑誌のページでかわいい雑貨を見つけると、商品の写真100点、200点をノートにひとつひとつ切り貼りしてコラージュし、“オリジナルノート”を作っていましたね。
―かわいいですね! 当時から自分の好きなもの、興味のあるものははっきりとわかったんですね。
そうですね。人と同じものじゃなくて、オリジナルなものが好き。父が日曜大工、母が編み物とかが趣味で、影響も受けているかもしれません。でも、作り方を教わるというより、モノづくりをかたわらで手伝っていると「米つぶはのりになるんだよ」と教えてくれたり。「へえー、そうなんだ! のりって買うものじゃないの? 自分で作れるの!?」みたいに、素材を大切にしたり、工夫することを教えてもらった。それがとても興味深かったんです。知恵を教わったんですね。
―なるほど。それがモノづくりの原点というわけですね。
はい。なので、何かを創りだすというのが楽しくて。広告制作会社に就職してからも、休みの日や家に帰ってきてからでも、気分転換によく、ペーパークラフトとかを作っていましたね。それを会社のデスクに飾っていたら、上司の目に留まって、ギフトカタログのイメージとして使いたいってことになったんです。でも、まさか、そんなことが仕事になるなんて思ってもみませんでしたね。
―趣味が仕事になったわけですね。でも、どこで技術を習ったんですか?
いえ、見よう見まねです(笑)。街でペーパークラフトのポスターを見れば、「どうなっているんだろう?」って、作る工程に興味がある。私、工夫するのが好きなんですよね。すぐにうまくできなくてもいいんです。何度も改良して、こうすればできるっていうのを発見するのが楽しい。例えば、変わった箱があったら展開してみて、どうなっているのか知りたいし。子供の頃から、腕時計も何個も解体して、なんで動くのか研究していました。だから、最初から作り方を教えてもらうのはイヤ。たどりつく感じが楽しいんです。だから、失敗も全然残念じゃない。

作品づくりに欠かせないアンティークレースは主にフランスのもの。
たくさんストックして作品に合わせてその中からセレクト。
いえいえ、まだ、早いです(笑)。30歳前になって、景気も悪くなってきて、広告業界もそのあおりを受け始めてきました。それまでの“お金のある人=豊かな人”という概念にも変化が出てきた。もともと、いわゆるバブルのノリについていけないたちでしたから、「10年近く仕事もしてきたし、ここでひと休みして、本当に豊かな暮らしってどういうものなのか見てみるのも今後の人生に良いかもな」と思ったんです。それで、10代の頃から興味のあったパリに仕事を辞めて移住したんです。
―ええー、いきなりですか。パリではどんなことを?
何のコネもなく、とりあえず行っちゃえと(笑)。楽しかったですね。いろんな出会いをしました。芸術家の卵たちの生活ぶりにも触発されました。例えば、一流企業を辞めて留学してきた25歳の日本人女性がアーティストになりたくて、地元の高校から入り直して、勉強して芸術家をしていたり。とにかく、やりたいことを実現するために、みんな、根性がすわっているんです。
―じゃあ、かなり刺激になりましたね。
そうですね。毎日が新しかった。こんな生活は二度と送れないと思っていたから、私は毎日、一行日記をつけることにしていたんです。今日、どこで映画を観たとか、その程度。でも、それが今でも残っていて、15年前の今日の私は何をしていたか、がわかるんです。面白いですよね。
―それは、楽しいですね。いい思い出になりそう。
それだけじゃなくて、毎日カメラを持って、フランスの四季を撮ろうと、シャッターを押し続けました。2000枚は撮りましたね。空、落ちているゴミ、例えば、踏みつぶされたシャンパンのコルクとか。確かに私がそこにいたという証。それらを持ち帰ってオブジェにしたりもしました。
![]() (左)『暮らしの中で必要になったものを作る』というのが基本。夏にはペットボトルホルダーが大活躍。 (右)アンティークのコサージュパーツはニュアンスのある色味が魅力。パリに行く度にコレクションしている。 |
―では、パリでの生活は、かなり充実していたんですね。
ええ。でも、1年ちょっとで帰ってきました。その頃はワーキングホリデーなどの制度もなく、お金を得る術がない。300万円の資金もあっという間になくなってしまいました。帰国して、フリーのコピーライターになったんです。そしたら、私が撮りためていたフランスの写真が、パリをテーマにしたファッションブランドのカレンダーに使われることになったんです。それで、デザイナーの事務所に行き来するようになって、そこに、面白いものを発見しました。枯れ枝をアクリル絵の具でペイントしたオブジェ。枯れ枝なのに、そう見えない。色を塗っただけなのに。
―“塗る”ってすごいと、気がついたんですね。
それで、自宅の壁やインテリアを水色や黄色に塗り始めたんです。その頃、インテリア雑誌の懸賞プレゼントで、ペイント剤セットが当たるというのがあって、それ欲しさに、アンケートはがきを送ったんです。確か、そこに、手作りの作品があると書いていたんでしょうね。編集部から連絡がありまして、「もしよかったら、読者の作品紹介ページがあるので、掲載させてもらえませんか」と。フランス語の文字を切り取ってマグネットにしたものなどを見せたら、「今度、クリスマス特集をするので、作ってもらえませんか」ということになったんです。
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