「刺繍は本当に自由なのよ」ということを伝えたい―おぐら みこさん
2008年12月06日04時01分おぐら みこ/Mico Ogura
ステーショナリーメーカーで商品企画、デザインを手がけたのち、フリーのイラストレーターに。グラフィックやWebの仕事、子どもの頃から慣れ親しんできたニードルワークもこなす。また、オリジナルのファブリックや手芸パーツなどのデザインもはじめ、ベビーのブランド「me-in beby - mico's design(マーインベービ)」、キッズのブランド「puti de pome(プティドポーム)」、“おとなのおんなのこ”がターゲットの手芸ブランド「ecrulat(エクルラ) 」(すべて清原株式会社)の3ブランドを展開中。著書に『モカのあかいふうせん』(日本ヴォーグ社)、『刺しゅうで描くまいにち』(文化出版局)、『こんにちはあかちゃん』(日本ヴォーグ社)などがある。新刊『刺しゅう生活、はじめます』(六燿社)は、実母で刺繍デザイナーの小倉ゆき子さんとの共著。ホームページ:http://www.smiledsweetly.com/
ふつうの刺繍の本ではない、なにか変わったことをやりたい
静かでとても居心地のよいアトリエ内。
デスクや椅子は、廃校になった学校からもらってきたもの。
最初はグリーティングカードのメーカーにいて、カードのデザインとかイラストを描いていて、そこには3年くらいいました。それからフリーになって徐々にコンピューターで仕事するようになっていったんですけど、OCNのキャラクターの仕事を始めたくらいの頃から、一気にコンピューターでイラストを描く仕事が増えたんですよね。そうしたら、ふと戻りたくなったんですよ、手仕事に。それが刺繍を始めたきっかけですね。
―具体的にお仕事として、刺繍を始められたのは?
当時はあまり若い人が刺繍するということがなかったんですけど、紹介したら、きっと可愛いものができるんじゃないかなと思って、自分でオリジナルの刺繍キットをつくる仕事を始めたんです。それをホビーショーで発表したら、いろいろなところから声をかけてもらって。それから本を出したり、イラストの仕事も幅が広がっていって、結局、今は布や手芸素材のデザインが多いですね。
―今年4月に発売されたばかりの『刺しゅう生活、はじめます』は、手芸デザイナーとしてご活躍のお母様、小倉ゆき子さんとの共著ですね。本を出すきっかけは何だったのでしょうか?
発行元である六燿社の担当者の方とずっと「ふつうの刺繍の本ではない、なにか変わったことをやりたいね」と話していて、どうせやるなら、「DVD付きをぜひやりたい」ということになったんです。でも、基礎のことを紹介するんであれば、私は教えられない。だったら、基礎知識も技術もある母親にやってもらえたら、ということになったんです。
―夢の親子共演ですよね。本の中では、基礎のステッチなどをお母様が指導されているんですか?
そうです。「実際に始めてみましょう」というところを私が担当して、図案も描いています。母も私もそうなんですけど、この本をつくった意図が、「当然、基礎は大事だけど、まず初めてみてほしい」ということだったんです。本の通りじゃなくていいし、図案通りじゃなくてもいいし、「まず刺してみようよ」ってことがいいたくて。いっぱい図案は紹介しているけど、ここから使わなくちゃいけないわけでもなくて、例えば、お子さんの画を図案にしてもいいですし。「刺繍は本当に自由なのよ」ってことを日々伝えたいと思っていたので。
(左)飾ってあるのは大好きなカメラ。「カメラの機材そのものが好き」と、みこさん。 (右)音楽を聞くときは、レコードをかける。大好きなロックのレコードや、絵本が並ぶ棚。 |
―みこさんは子どもの頃に、お母様から刺繍を教わっていたんですか?
ちゃんと教わってはないですね。見ていただけです。だから、ちょっと高度なステッチは、見ているだけでは当然できなくて。仕事がきてから、「このステッチってどうするんだっけ?」って聞いたことも多いです(笑)。聞いてみると、「なるほど」って思うんですよ。このDVDでもそれがよくわかるようになっていると思います。
―なるほど。それでは、みこさんにとって、刺繍の楽しみというのは、どんなところですか?
もともとイラストレーターなので、刺繍は、私の中では画材が変わったというだけなんですよ。それが絵の具か、糸かという感覚の違いですね。だから、絵を描く感覚とそんなに変わらずやっている感じです。ここには刺繍糸で刺したいか、絵の具で描きたいかっていう。それと、テーマをもらってつくること、結局、商品をつくるというのが好きなんですよね。ひたすら自分の好きな絵を描くとかではなくて、ちゃんと売れるもの=プロダクトをつくるのが好きなんです。
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